最近、質問箱に次のような質問をいただきました。
エッセイは特に書き方が決まっているわけではなく、何をどのように書くかは完全にその人の自由です。自由だからこそ何を書いたらいいかわからない、という人もいると思います。
私はつらいことを題材に書いていますが、もちろん楽しいと思うことがテーマでもOK。自分が書きたいと思うテーマを探してみてください。

私はnoteで150本以上のエッセイを書いています。
最初は1本書くのも時間がかかり、書き出すまで画面の前にただ座っていたこともありました。
今回は私が初心者からエッセイを書き始めるまでに考えた工夫を紹介します。「絶対にこう書くべき!」というものではありませんので、ぜひ一意見として参考になれば幸いです。


エッセイとは?


大辞林 第四版(三省堂)で「エッセー」を引いてみました。
①形式にとらわれず、個人的観点から物事を論じた散文。また、意の向くままに感想・見聞などをまとめた文章。(後略)
大辞林 第四版(三省堂)
書くのは個人的な考えなので、エッセイを書くために何かの専門家である必要はありません。散文なので、俳句や短歌のような形式が特に決まっていないことがわかります。
余談ですが、最近の文学フリマでは「エッセイ・随筆・体験記」のジャンルが人気。文学フリマ東京38のWebカタログでは、約1,800ブースのうち300ブース弱が「エッセイ・随筆・体験記」のカテゴリで登録していました。



もしエッセイが書けたら自分で本にまとめて、文学フリマなどのイベントで販売してもいいかもしれません!
エッセイの書きやすいテーマは?


「何を書いたらいいかわからない」という方は、次の3つの中から探してはいかがでしょうか?
- 過去の体験
- 日常生活のエピソード
- ふと考えたこと
私のエッセイも一部紹介します。お手本というより「こんな感じでいいんだ」とハードルを下げてもらえたら嬉しいです。
過去の体験
子どものころから学生時代、社会人までに私たちは色々な体験をします。その中で記憶に残っていることや珍しい経験があれば、エッセイの題材になるはずです。
私は学生時代に旅行や飲み歩きをしていたので、そこで見た景色や出会った人との交流をエッセイにしました。


また、私は過干渉の母親とアルコール依存症の父親に育てられた体験から『毒親育ちが大人になってから』というZINEを作りました。楽しい体験でなくても、エッセイの題材になります。
私の場合は辛い体験でも、「人に伝えたい」という気持ちが勝っていました。文章の形にして人に伝えることで、気持ちを共有できて救われました。
日常生活のエピソード
私たちは日頃から仕事や子育て、趣味を通してさまざまなことを考えているはずです。生活していてつらい、または楽しいと感じたことを掘り下げるだけでもエッセイになります。
私のエッセイにも、時々料理の話が登場します。特別なことはしていなくても、視点によっては斬新な印象になるはず。
ありふれた日常生活も、自分の言葉で綴ればエッセイとして成立します。


ふと考えたこと
エッセイとは個人の考えを書くものです。自分の悩みや考えを文章にするだけでも、立派なエッセイになります。
私は社会人になってから、仕事が合わず苦しい思いをしていた時期があります。「なぜ仕事がつらいのか」を考えてエッセイにしたこともありました。


本や映画を見て考えたことでもいいですね!


最初は上手に言語化できないかもしれませんが、書き続けるうちに洗練されてきます。納得いかなくても、自信がなくても継続することが大事です。
私が実践しているエッセイの書き方


私がエッセイを書くときに心がけている工夫を紹介します。
- 出来事→感情→考察の順に深掘りする
- 書き出しは普通でOK
- 日頃から書けるネタを探す習慣をつける
「使えそうだな」と思ったら参考にしてください!
出来事→感情→考察の順に深掘りする
1つの型として、出来事→感情→考察の順に書くと読みやすいです。理由は最初に事実を書くと書き出しが楽で、かつ筆者を知らない読者にも読んでもらいやすいから。
自由だからこそ悩むのがエッセイ。だからこそ、何を書くか枠を自分で決めておくとスムーズに書き出せます。



書きにくいと思ったら、枠は自分で変えてもOK。
「上手に書く」よりも「まずは書く」を目標にしましょう!
書き出しは普通でOK
凝った書き出しは、それだけでエッセイの魅力を高めます。
しかしいい書き出しが思いつかない場合、そのまま書かないよりは普通の書き出しで書いてしまった方がいいでしょう。
上手に書こうとすると、かえって読者が「読みにくい」と感じて途中で読むのを止めてしまうかもしれません。「どこに行った」「誰とこんな会話をした」でもいいので、素直にわかりやすい書き出しがおすすめです。
日頃から書けるネタを探す習慣をつける
エッセイを書こうと思い、いざパソコンに向かうと「何を書こう…」と悩んでしまう人もいるはず。
パソコンの前に座っていても、ネタは浮かびにくいもの。日頃からエッセイのネタを探す習慣をつけておくと、コンスタントに書き続けられます。
備忘録としてSNSに投稿しておく→あとで文章に書き起こす、という方法もあります。
私がエッセイを書くとき参考にしている作家【渋め】


余談として、私がエッセイを書くときに読んでいた作品を作家ごとに紹介します。
- 沢木耕太郎
- 伊坂幸太郎
- ジョージ・オーウェル
総じて、割とクールな文体の作家が好きです。私の文体も「淡々としている」と言われることが多いので、影響を強く受けた結果かもしれませんね。
なお、書けずに悩んでいる場合、ライティングのノウハウ本はあまりおすすめしません。「こう書かなきゃ」と思うと、逆に書きにくくなってしまいます。
書くハードルを下げること、楽しく書けることが第一です。ノウハウ本は、もっとうまく書きたいと思ったときに参考にすればOK。
沢木耕太郎
沢木耕太郎はノンフィクション作家。銀行に内定するも、初日に会社へ向かう途中で退職を決心し、そのまま現在までフリーのライターとして活動しています。ロックすぎる…。
沢木耕太郎といえば旅行記『深夜特急』が有名ですが、他にもエッセイやルポを書いています。





もちろん『深夜特急』もおすすめ!
私は大学時代に夢中になって読み、気が付いたら明け方になっていました。
私にとって沢木耕太郎の印象は「成り行きに身を任せ、アクシデントも面白がる人」。一見些細な出来事でも、沢木耕太郎によれば情緒ある雰囲気の文章になります。
新幹線車内誌『トランヴェール』で連載していた『旅のつばくろ』は、国内旅行について書いたエッセイ。単行本化しており、ほどよい長さで読みやすいボリュームです。


伊坂幸太郎
伊坂幸太郎というと小説が有名ですが、エッセイも書いています。小説だと『重力ピエロ』が好きです。
最近読んだのは『仙台ぐらし(集英社文庫)』。仙台で暮らす平凡な日常を、筆者がエッセイで綴っています。


小説家=浮世離れした非凡な人、というイメージでしたが、エッセイを読んでみると「意外と普通の人なのかも」という印象を受けました!
ジョージ・オーウェル
ジョージ・オーウェルはイギリスの作家。小説「1984年」は、ディストピアSFとしてあまりにも有名です。
インドで警察官をしていたときのエピソードや、紅茶の淹れ方に関するエッセイも書いています。『あなたと原爆』には評論とともに、彼のエッセイが収録されています。ジャーナリストの経験からか、理知的な文体が魅力です。


エッセイは自由!気を張らずに書いてみよう


今回はエッセイの書き方について、私なりの方法を紹介しました。
エッセイに決まった書き方はありません。だからこそ「どうやって書こう」と筆が止まってしまう人もいるでしょう。
最初から上手く書こうとするのではなく、書きながら考えると上達してきます。書きながら考えることが大切です。



私もエッセイZINEを作っていますので、もしよかったら参考にしてください!
通販サイトもあります。