アンソロジーを企画し、主催したいと考えている方へ。
一からアンソロジーを企画するには何から始めたらいいかわからない方もいるはず。以前とある方に「アンソロジーを企画しているんだけど…」と相談されたこともあり、知見を共有できればと思いこの記事を書きました。

私は参加者、主催を経験しています。
アンソロジーではないのですが、共著のKindleも寄稿・校正を担当しました。
今回は私がアンソロジーを主催した際に実践していたこと、制作のスケジュールを紹介します。自分で主催するとき、参考になれば幸いです。
アンソロジーの主催が決めておくこと


アンソロジー主催者が初めに決めておくことをまとめました。
- テーマ
- メンバー
- スケジュール
- 印刷会社
- 連絡体制
- 謝礼
テーマ
アンソロジーを企画するとき、一番最初に決めたいのがアンソロジーのテーマ。参加者はまずテーマを見て、参加するかどうか判断します。
自由度が高すぎると、かえって書くのが難しい場合も。二次創作であれば作品やキャラクター、エッセイであれば題材を明確にしましょう。
テーマを決めるにあたり、大事なのは自分が「読みたい」と思う題材であること。アンソロジーの主催は手間もかかりますし、ほとんどの場合は自分で費用を持ちます。自分が好きでないテーマでは、モチベーションもキープできません。
メンバー
メンバーを集める方法として、公募または直接声を掛ける方法があります。私は書いてほしい人に声を掛けてアンソロジーを主催しました。
公募のメリットは知り合い以上に広い範囲で募集できる点、人が集まりやすい点です。一方で不特定多数の人が参加できるため、全員が締め切りやルールを守ってくれる保証はありません。
文学フリマで文藝キカン誌『霞と息』を発行している清香舎さんは、noteにて寄稿者を募集しています。





私も募集を拝見し、創刊号に寄稿しました!
作品はBOOTHで購入できます。
直接声を掛けるメリットは、日頃の作品やクリエイターさんの人柄を見てから参加してもらえる点です。もともとつながりがあれば、連絡もスムーズに取れます。先ほど紹介したKIndleは、所属しているオンラインサロン・夢波サロンのメンバーで作ったもの。
デメリットとして人によっては声を掛けるハードルが高い点、募集できる範囲が限定的である点があります。
イベントに出店した経験がある方は、イベントで知り合ったクリエイターさんに声を掛ける方法もあります。私は自分でアンソロジーを企画したとき、文学フリマやZINEフェスで知り合った方にコンタクトを取りました。
スケジュール
テーマやメンバーが決まったら、次に決めたいのがスケジュール。イベントで販売する場合は逆算して入稿日、締め切りを設定しましょう。
スケジュールについては後ほど紹介します。参加者の予定も考慮して、なるべく余裕を持ったスケジュールを設定しましょう。
印刷会社
印刷会社によって納期は異なります。



印刷会社によっては、イベント前の注文が埋まってしまうことも…。
スケジュールを決める段階で、印刷会社も決めておきましょう。私はちょ古っ都製本工房を利用しています。文章メインのアンソロジーであれば、こちらがおすすめ。


連絡体制
いざ始めてみると戸惑うのが、連絡体制。声を掛けるときはLINE、SNS、メールと複数の連絡手段を使っていたのですが、アンソロジーを主催する場合は統一しないと連絡漏れのリスクがあると気付きました。
参加者、主催者として今まで使っていたツールはslack、Discord、メールリスト。いずれも無料で利用できます。
自分で主催したアンソロジーではslackを使っていますが、無料プランではグループ通話(slackではハドルミーティング)ができません。メッセージのやりとりだけならslackが便利ですが、通話の予定がある場合はDiscordがおすすめです。
謝礼
参加者に報酬を用意している方もいますが、体感としてほとんどのアンソロジーでは謝礼が出ません。代わりとして完成したアンソロジーを献本しています。
謝礼については参加の時点で明確にしておかなければ、後々金銭トラブルにつながります。必ず謝礼の有無(ある場合は金額)をあらかじめ参加者に伝えましょう。
先ほど紹介した清香舎さんは、3,000円の原稿料を出しています。


アンソロジーを作るスケジュール


アンソロジーを作る際のスケジュールについて、私が作成したものを紹介します。
メンバーの数や原稿のボリュームによって最適なスケジュールは異なるため、ご自分で企画される際は調整してください。初めて主催したのと、余裕があったので期間は長めに設定しています。
時期 | 予定 |
6月 | メンバー募集 |
7~9月 | 初稿執筆 |
9/15 | 初稿提出締め切り、順次校正 |
10/15 | 修正稿提出締め切り |
11/1 | 入稿 |
12/1 | イベント当日 |
企画書の作成(数日〜1週間)
まずは企画書を作成しましょう。会社で作るような体裁をとる必要はなく、箇条書きで要点が書いてあれば十分です。
作ったら一度人に見てもらうと安心です。私の場合は後輩と共同で企画していたので、叩き台を作って後輩にフィードバックをもらっていました。
メンバー募集(1ヵ月)
企画書が完成したらメンバーを募集します。公募する場合はSNSで投稿・拡散して、少しでも多くの人に見つけてもらいましょう。



声を掛ける場合は、企画書も添付すると丁寧です。
参加者にとって、特に気になるのがスケジュール。多くの人は仕事や家庭と並行して創作活動をしています。余裕を持って原稿を書いてもらえるよう、メンバー募集は早めに行いましょう。
原稿を作成してもらう(2~3ヵ月)
企画書を作りスケジュールを決め、連絡体制を構築してからは各メンバーに原稿を作成してもらいます。私のアンソロジーはエッセイなので、Google Documentで作成してもらいURLを共有して原稿をいただいています。



自分でも原稿を書く場合は、原稿を待っている間に進めておきましょう。
私は原稿を書いてもらうためのサポートとして、オンライン作業会を企画しました。さきほどご紹介した清香舎さんは、任意参加の合評会を開催しています。
データのチェック・校正・修正稿提出(1ヵ月)
締め切りになり、原稿を受け取ってからが正念場です。データのチェックや校正を行います。データ形式やレイアウト崩れ、文字化けがあれば早めに対応しましょう。
校正を一人で行うのは大変なので、誰かに協力を仰ぐか校正ツールの使用がおすすめ。月数千円で利用できるサービスもあります。


入稿・印刷(2週間)
入稿データの作成が終わったら、いよいよ入稿へ。不安なら1冊だけ注文して、見本を入手しましょう。
納期は入稿してから10営業日ですが、2週間程度の予備日を設けています。万が一原稿の提出が遅れても、ある程度は巻き返せるスケジュールにしています。
イベント前は告知も大事です。イベント出店のお知らせや、アンソロジーの試し読みをSNSで公開すると作品を知ってもらえます。
トラブルを防ぐために気を付けていること


ネットで調べると、アンソロジー主催でトラブルになった例も見つかります。複数のメンバーで作る以上、トラブルを100%防ぐのは難しいですが、私がトラブル防止のために注意しているポイントを紹介します。
- 大事なことは文面で残しておく
- こまめにリマインドを送る
- 質問、相談をしやすい雰囲気をつくる
アンソロジーは仕事ではなく、有志の方が好意で引き受けてくれています。敬意を払いつつ、期日通りにより良い作品を出せるよう努めましょう。
大事なことは文面で残しておく
仲間うちでアンソロジーを企画する場合、締め切りやテーマが曖昧なまま企画が進んでしまう場合も。期日や金銭面など、大事なことは文面で残しておきましょう。
後で見返せるだけでなく、万が一トラブルがあったときの証拠になります。
こまめにリマインドを送る
参加者がアンソロジーの原稿をつい忘れてしまうこともあるかもしれません。思い出してもらえるよう、定期的にリマインドを送っています。
リマインドは2ヶ月前、1ヶ月前、2週間前、1週間前、前日あたりに送るとちょうどいいかと思います。



思い出してもらうだけでなく、定期的に連絡していると参加者からも連絡が取りやすいかも…と思っています。
質問、相談をしやすい雰囲気をつくる
やや漠然としていますが、質問や相談しやすい雰囲気づくりを心がけています。仕事ではなく趣味だからこそ、参加者にも楽しんでもらいたいですよね。



締め切りが迫っているけど、問題があり原稿が進まない…という場合も、早めに気付けます。
せっかくアンソロジーという接点ができたなら、今後も良好なお付き合いができれば嬉しいはず。アンソロジーを作る過程まで楽しんでもらえるよう、雰囲気づくりにも気を払っています。
まとめ


今回はアンソロジーを主催したい方に向けて、企画書やスケジュール、私が注意しているポイントを解説しました。
人と作品を作るのは大変なこともありますが、その分一人では作れないものもあります。



「こんな作品が見たい」という熱量が大事です!
作品が完成し、人の手に渡ると喜びもひとしお。ぜひ自分の「好き」を形にしてください!
ちなみに私が今作成しているアンソロジーはこちら。12/1の文学フリマで販売します。

